FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

大『助手』論 ~症例報告の勧め~

論文を書いた事がない、もしくは、書きたいけど何を書いたらいいかわからない、という下っ端心臓外科医のために、症例報告の勧めを書いてみたいと思う。僕自身も人に教えるほど書いている訳ではないので、日常の診療業務+少しの努力で書いていた僕のやり方をここで紹介したいと思う。

そもそも、論文を書けと言われても、時間がとにかくない。机の前に座っている時間なんてそう多くない。ましてや、論文を書くような時間はそう多くない。そういう中でどう書いていくか。何を書いていくか。

いきなり、原著論文はちょっとしんどいと思う。過去のカルテを引っ張り出して、データを全部収拾して、統計計算をして、と考えるとそれだけでうんざりする。原著論文でも、症例数自体が少なければ簡単のように思うが、そういう論文は統計処理に工夫が必要になってそれこそ難しいことがある。

僕のような下っ端心臓外科医に一番書きやすく、工夫次第でそんなに時間もかけずにかけるのが症例報告だとも思う。立派な原著論文も症例報告も論文の数としては『1』。恥じる事なく、まずは書いてみる事をお勧めする。

まず、何を書くか?
症例報告と言っても、色々な種類がある。疾患そのものが珍しいもの、手術そのものが変わっているもの、病気を発見されて治療までの経緯が特異なもの、術後管理での工夫、予想しない合併症と遭遇したもの、予期せぬ合併症で失ってしまった症例、などなど。このうち、一番書きやすいものは、『疾患そのものが珍しいもの』、『手術そのものが変わっているもの』,だと思う。逆に、数が思っているよりも少なくて論文にはなるが、書くのが難しいのは『術後管理での工夫』ではないだろうか。『術後管理での工夫』を症例報告で書くのは考察での論理の組み立てがかなり難しいが、論文そのものはかなり面白いと思う。(僕は、たくさんの人に読んで欲しいと思ったので、そういう論文はO薬品のKさんに相談して、そういう報告の多く乗っている商業誌にのせてもらっていた。Kさんにはとても感謝している。論文を発表するにはそんな方法もある)

『疾患そのものが珍しいもの』、『手術そのものが変わっているもの』で話を進めたいと思う。

術前にどんな患者さんが来て、手術になるのか、という事は割と早い段階でわかっているはずなので、珍しい症例に遭遇して、上司が治療方針で悩んでいるのをみたら、『この症例は論文にしたらものになりますか?』と尋ねよう。自分で判断できればいいが、知っていることの量が全然ちがうので、聞いてみるのが一番安全だ。書いても、こんなの珍しくないよ、と言われたら努力が無駄になる。そして、そう言う事は、『僕が書きます!!』宣言になる。その上、宣言する事で自分に少しプレッシャーをかける。

実際の現場で手術方針の決定がどのようになされたか、どういう考え方でされていったのかをカルテにきちんと文章で、書いておく。数回にわたる検討がされた時はその度に書いておく。どうしてそうなるかわからない時は、なぜそうなったかを尋ねてそれも記載する。そして、それをWORDにコピペしておく。

さらに、病歴、検査データ、入院後経過は手術までにまとめて文章でカルテに記載する。これは、術前のカンファの資料を作ったりする時も作るだろうし、サマリにも必要だと思うので、仕事が増えるという事ではない。これをまとめてWORDにコピペしておく。

手術までに時間があるので、その間、徹底的に過去の参考文献を調べ上げる。PubMedでもいいし、日本語論文ならCINii(http://ci.nii.ac.jp/)が使いやすいかも。googleのscholar(http://scholar.google.co.jp/schhp?hl=ja&rlz=1T4TRDJ_jaJP3&tab=ws)もなかなか使える。どんな参考文献を見つけるのか?自分たちのやろうとしている手術の妥当性を裏付けるような論文と、その反対意見の論文をまずは集める。反対意見とまでいかないものの、手術のバリエーションについて検討してある論文を集めるといい。極めて希少な疾患だと、そういう論文すらないかもしれないが、類似の疾患でどういう治療がされているか、書いてある論文も役に立つ。そして、そういう珍しい疾患での術後合併症についても調べておく。これは、実際に自分が術後管理をする上で役立つ事この上ない。

ここまでしておくと、手術の時にはこの疾患のスペシャリストになっている。
と言っても、これは関わる医師として、至極当然の仕事であるとおもう。だから、論文を書くからこんなことをするのではなくて、普段やっている事が論文を書く事につながる、と言った方が適切かもしれない。

手術が終ったら、その夜のうちに論文を書き上げてしまう。ここだけが頑張りどころ。
術後管理でどうせ眠れないのだから、ベッドサイトやICUのPCで一気に書き上げる。と言っても、病歴、検査データはコピペしてあるので、『手術』と『考察』をかけばいい。『手術』は見た事をいつもの手術記録のように書けばいいし、執刀医が手術記録をかいていたらコピペすればいい。考察は、まずは、その疾患が希少な事、手術適応の妥当性、術式選択の妥当性、それぞれの反対意見、をまず書く。これは、すでに検討ずみ、しかも参考文献も持っていて読み込んでいて頭のなかに入っているから、ほとんどそらで書ける。手術適応や術式選択の妥当性はすでに、コピペしてあるので、それを参考文献で裏付けしていけばいいし、反対意見には実際の手術をやった上の経験で論破していけばいい。さらに、術後に予想される事はこういう合併症だ、ということまでかいて寝よう。

手術の夜は疲れてはいるが、テンションは高い。しかも、この手術に向けて知識と集中力を高めてきたので、もっとも知っている時だし、考えているときなので、ここで書かないのはもったいない。明日になれば急激に忘れていく。

術後におきる合併症はカルテに記載していくが、特記すべきもの、この疾患に特有なものは出来るだけ詳しく文章にしてカルテに記載する。それを先ほどの原稿の『術後経過』にコピペする。検査のデータなども記載する。治療は、すでに術前に論文を集めているので、それを参考に行う。予期せぬ合併症ならさらに調べる必要がある。その合併症に関する論文がなければそれこそ、自分が書かなければいけない使命だと思って注意深く観察、治療をして、当然だがカルテに記載。面倒に思わずに、毎日コピペして原稿に張っていく。

術後の検査データも
無事退院の前に、『術後経過』と考察の術後管理で予想される合併症の続きを書く。『術後経過』はほとんどコピペしてあるので、重要なデータだけ残して整理する。考察の続きは合併症に対して、なぜそのようなことが起きたのか、自分たちの治療の妥当性と結果の考察を開き加えるだけでいい。メインは合併症ではないので、簡潔に書き加える。

さて、無事に退院の日を迎える事になる。

退院の前に、原稿を論文調に仕上げる。形を整えて、語尾や誤字脱字を直す。構成や内容を考え直してもいいが、あまり大改造はここではしない方がいい。

もし、外来で検査を必要とする場合は、検査の内容と検査結果を空欄にしておいて、データを入れるだけにしておる。希望をこめて、論文には『このように経過良好で問題なかった』と書いてもいいし、データが考察に必要であれば、予想されるデータで考察を書いていてもいい。外来を見るのが部長だったりするとき、この検査こんな意味でやってます、とか、絶対忘れんなよ!というアピールにもなる。

次に参考文献を書く作業になる。これがものすごく面倒。EndNoteを使い始めてからはかなり楽になったが、それまではこれが一番嫌な作業だった。だから、一つの論文に対して、参考文献は5つ、多くても10個と決めていた
。症例報告にそんなに数はいらないし、書くのが面倒だから。

最後にabstructを書く。これは一番最後に書く。しかも、ここまで頑張った自分を誇らしく思いながら、一生懸命検討して頑張って患者さんが元気になったことを喜びながらご満悦で書く。英語で書かないといけない時もあるが、日本語論文だと日本語も書かないといけないのでとりあえず日本語だけ書いておく。自分で英語が書ければ問題ないが、書けない時は探せば一人くらいは英語が得意な人がいるので、その人に書いてもらえばいい。部長にお願いして、普段偉そうにしている部長の実力を測ってみるのも面白い。僕は、abstructは英語をまず書いて、それを日本語に訳すという順番で書いている。というのは、当然だが、英語も日本語も内容は同じでないといけないが、日本語でまずかくとどうしても英語にできないニュアンスの文を書いてしまうことがある。英語は日本語よりも僕の能力的に多数の言い回しができないので、かなりシンプルな文に出来上がる。それを日本語に訳すとシンプルでわかりやすいabstructになる。

今度はこの論文原稿をサマリにコピペする。これでサマリも論文も完成。


しかも、論文原稿は退院の日の朝に、部長に『これを見て下さい。』と渡す。これがカッコいい。間違いなく全員おどろくし(最初の1回だけ。あとは、よくやるな~という冷ややかな反応になる。笑。)、何より、自分が大満足。



コツは、ちょっとずつつみあげることと、と、患者さんの治療のために普段やっている努力のリサイクル。












スポンサーサイト
このブログの登場人物
A教授:この病院のボス。手術中の紳士的な態度もさることながら、普段の笑顔も素敵。 H先生:A教授と同じ立場のボス。手術中は吠える鬼神に化す。手術を離れるとびっくりするくらい温かい人。実はいろいろな人のことをよく考えているのはこの先生。スロバキア人。 心臓先生:定年まじかのベテラン心臓外科医。みんなの指導医で、論文の数も凄まじく、統計処理も天才的。アフリカのブルンジ人。 J先生:兄貴のような執刀医。明るくて楽しいのだけど、感情の起伏が激しくて手術中は叫びまくることも。でも、その次の瞬間には笑っている。ギリシャ人の血をひくドイツ人。2012年の8月からベルリンの小児心臓外科のボスとして赴任。 C先生:推定年齢45~48歳の女医さん。だれも本当の年齢は知らない。長くこの病院に勤めていて、J先生の去った後、ようやく執刀医の位置に。ドイツ人。 L先生:J先生の後がまで赴任してきた先生。アメリカで修行した経験あり。ドイツ人らしい慎み深いいい人。 P先生:30歳の唯一の若者。元気でいい奴だけど、ちょっと性格が悪く看護師さんからは嫌われていたりいなかったり。H先生と同じスロバキア人で、H先生の保護下にいる。やや過保護?! D君:元々はスクラブナースだったけど才能を見いだされて手術アシスタントに。
プロフィール

遮断鉗子

Author:遮断鉗子
心臓外科医のブログです。
小児心臓外科医(35歳 心臓外科 10年目)のドイツ留学記です。
2010年7月からドイツに。

毎日の手術の事を中心に。ドイツビールの紹介もしていきます。

心臓同好会
心臓を熱く語る、勉強するみんなの会です!! こちらにも遊びにきてくださ~い!!
遮断鉗子へのメールはこちらからどうぞ
記事に関係ないことを言いたい!!  他の人には読まれたくない!!  という方はこちらからメールをお送りください。

名前:
メール:
件名:
本文:

最新コメント
リンク
カテゴリ
月別アーカイブ
来て下さった方々
最新トラックバック
検索フォーム
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。