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ファロー四徴症根治術

7kgのピンクファロー。ほぼ心室中隔欠損症。手術はH先生、僕、ロシアからのお客さん。ロシアからのお客さんへの指導的手術で、H先生が1つ1つ丁寧に教えながら手術を進めていった。大きい子だし、よく見えるしわかりやすい。この手術は2助手のほうが圧倒的に術野は見えるから、ロシアからのお客さんもしっかり見えていたようだ。肺動脈弁はほぼ正常の大きさだったので、肺動脈切開後、肺動脈弁の交連部切開。肺動脈弁越しに右室流出路の異常筋束を切除。三尖弁越しに心室中隔欠損閉鎖。H先生は解説しながらいつもよりもゆっくりやっていたけど、手術室で抜管して12時にはICUに。

今日からロシアから麻酔科と心臓外科の2人、オランダから1人の心臓外科医が実習(?)に来ている。ロシアの心臓外科医は小児部門のボスで、でで〜んとお腹が出ている。身長は170cmくらいだけど、体重もそのくらいありそう。オランダ人はひょろ〜っと背が高く2mはゆうにある感じ。並ぶと、まるで『デブの国ノッポの国』のよう。

ロシア人の先生はH先生を頼ってきているので、自動的に手術の2助手に入る。国に帰ればボスと呼ばれる人を相手に胸開け、そして僕が前立ちになる。英語もドイツ語もいまいちわかってない人と手術するのももう慣れたからいいのだけど、ロシア語で話しかけてくるのには日本人の伝家の宝刀『あいまいな作り笑い』で返事をしておく。このロシア人の先生、手術に熱中するあまり、ものすごく術野に近づいてくる。うん。それはいいんだ。仕方ない。でも、顔が普段の2助手の位置でも、腹はずっとずっと前立ちの僕の方にやってくる訳で。『ほら見てご覧よ』とH先生が肺動脈弁を見せようとすると、それは普通は患者さんの頭の方、すなわち僕の位置くらいしか見えないからその分僕に近づく。生まれて初めて左半身に感じる圧倒的なお腹の圧力(これが女性のおっぱいならなんて不謹慎なことは手術中に考える暇はない、と言う人でありたい)と、じと〜と湿り気を含んだ空気。ふと見ると、やっぱりそうよね。汗びっしょり。見終わったら戻ってくれるかと思いきや、そのままその場にとどまり、僕の作業スペースは両手が揃えてだせるぎりぎりの広さ。北方領土の前に、僕の仕事をするスペースを返還して欲しい。

彼がドイツ語わかんないことをいい事に、あま〜り性格のよくないスクラブナースは、もっとやせろよ!とか、そんなに遮断鉗子に近寄んなよ!!とか言いたい放題。彼女はアフガニスタンの出身でソ連が侵攻してきた時に命からがらドイツに逃げてきた事をみんな知っているから、みんな聞いて聞かぬ振り(なぜか、ロシア人と中国人はどこに行っても嫌われている)。H先生もスロバキア人で、ロシア人をあまり良く思ってないことは知っているけど、彼はさすがに紳士的な態度。もしかするとロシア人に教えているというのはある意味、彼のそういう辛くて悲しい過去を幾分か慰めるものになっているのかもしれない。

術者はスロバキア人、1助手は日本人、2助手はロシア人、スクラブナースはアフガニスタン人、麻酔科はドイツ人。ロシア人の先生が『スパシーバ』と言って手術室を後にする後ろ姿を見ながら、少しだけ感慨深かった。時代が違えば、ここだけで世界大戦ができるような面子だけど、ここで一人の子どもが救われる。平和って思っている以上にずっと素敵かも。



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No title

遮断鉗子先生
ご無沙汰しています。ayamigoです。
祝!ブログ再開。
私も変わらず手術室で奮闘しております。

手術室で働いているので、遮断鉗子先生が
伝える、ロシア人先生の圧迫感・・
じっとり感、想像すると、遮断鉗子先生には
申し訳ないですが、ちょっと笑ってしまいました。
イメージできるだけに・・・

スクラブナースさんが、言いたい放題って
すごいですね~。私にもその余裕が欲しいくらいです。
でも、‘遮断鉗子先生に近寄んなよ!’って
ちょっと嬉しいですね。

それにしても、遮断鉗子先生、たっぷり充電できたようで、
よかったです。『デブの国、のっぽの国』に始まり、
北方領土返還! 最高に楽しく読ませていただきました~!

国の違いなんて関係なく、子どもの命が救われる・・
本当に、素敵な世の中だと、しみじみ感じました。

私も頑張ろ~っと。
先生、応援してますよー。

Re: No title

ayamigoさん、コメントありがとうございます!!

久しぶりに日本語の文章を書くのは緊張しましたが、読んでもらえて嬉しいです。たまには休むのも大事ですね。まだまだ本調子ではないですが、ぼちぼち頑張っていきますね。これからも応援よろしくお願いします!!

スクラブナースは威張っていますよ〜。この人たちに認められないと仕事できません〜。

また、気軽にコメントお願いします!!

No title

遮断鉗子さん

ayamigoさんに引き続き、祝 ブログ再開!!


それにしても、日本から遥か彼方のドイツの、とある病院の手術室で
小さな命を救うために、ドイツ・スロバキア・ロシア・アフガニスタン・オランダetc
そして日本と、言葉も文化も違う人たちが、同じ志をもって集まっているなんて
素敵ですね。

手術という緊張感漂う空間の中にも、笑いあり、感動あり、奮闘している
遮断鉗子さんを日本から応援しています!


残り少ないドイツ生活のようですが、手術室での遮断鉗子さんの奮闘記
楽しみにしています。



Re: No title

odatさん、コメントありがとうございます!!

再開を喜んで頂いて光栄です。ありがとうございます!!
改めて、世界中でいろいろな人がこどもを助けたいと思って頑張っている姿はなにか感動するものがあります。

残りわずかですが、頑張ります!!

また、気軽にコメントお願いします!!
このブログの登場人物
A教授:この病院のボス。手術中の紳士的な態度もさることながら、普段の笑顔も素敵。 H先生:A教授と同じ立場のボス。手術中は吠える鬼神に化す。手術を離れるとびっくりするくらい温かい人。実はいろいろな人のことをよく考えているのはこの先生。スロバキア人。 心臓先生:定年まじかのベテラン心臓外科医。みんなの指導医で、論文の数も凄まじく、統計処理も天才的。アフリカのブルンジ人。 J先生:兄貴のような執刀医。明るくて楽しいのだけど、感情の起伏が激しくて手術中は叫びまくることも。でも、その次の瞬間には笑っている。ギリシャ人の血をひくドイツ人。2012年の8月からベルリンの小児心臓外科のボスとして赴任。 C先生:推定年齢45~48歳の女医さん。だれも本当の年齢は知らない。長くこの病院に勤めていて、J先生の去った後、ようやく執刀医の位置に。ドイツ人。 L先生:J先生の後がまで赴任してきた先生。アメリカで修行した経験あり。ドイツ人らしい慎み深いいい人。 P先生:30歳の唯一の若者。元気でいい奴だけど、ちょっと性格が悪く看護師さんからは嫌われていたりいなかったり。H先生と同じスロバキア人で、H先生の保護下にいる。やや過保護?! D君:元々はスクラブナースだったけど才能を見いだされて手術アシスタントに。
プロフィール

遮断鉗子

Author:遮断鉗子
心臓外科医のブログです。
小児心臓外科医(35歳 心臓外科 10年目)のドイツ留学記です。
2010年7月からドイツに。

毎日の手術の事を中心に。ドイツビールの紹介もしていきます。

心臓同好会
心臓を熱く語る、勉強するみんなの会です!! こちらにも遊びにきてくださ~い!!
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