FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

なりゆきの論文教室〜5時間目〜 ツタンカーメンの墓の宝物

僕を窮地から救い出してくれたのは、アラーの神様だった。



統計の勉強をしようよ。



彼がそう言った後に、僕の口はポカーンとあいたたままになり、目はうつろにパソコンの画面を見るでもなく眺めていた。右手の人差し指は、まるでストレスを抱えすぎた時に衝動的におこる貧乏ゆすりか、あるいはとてつもない恐怖を目の前にしたときの震えのように、カチカチとクリックしていた。そして、偶然にも開かれたフォルダの中に、もう随分前に見て、記憶の奥の方に埋もれていたあるPDFファイルがあった。


これだ!!


このフォルダは、僕の前にいたエジプト人のフェローの先生がこの病院に残した遺産として大切にされているもので、フォルダ名は『ツタンカーメンの墓』。何が入っているかというと、現在地球上に存在する英語もしくはドイツ語で書かれた心臓外科、循環器科、小児循環器科、集中治療、小児科と言った教科書のPDFファイルが無数に蓄えられている。しかも、そのPDFファイルは自炊したような性質のものではなくて、どう見てもオリジナルではないか?と思うような1ページ1ページがクリアで皺も影もない奇麗なファイルなのだ。しかも、彼は、アラビア語でかかれたHPにアクセスしてそれらを簡単に無料でダウンロードし、そこに蓄えていったらしいのだ。どうやら、アラビア社会にはそういうサービス?があり、しかもアラビア語で全て表示されるらしいので、西洋人には検閲できずに、無法地帯として成立しているらしい。いったい、誰が何のためにやっているのか?そんなの愚問です。アラーが恵みを施すためにやっているのでしょう。

そういう教科書のファイルがつまったフォルダ。エジプト人が残した宝物が埋まったフォルダだから『ツタンカーメンの墓』。その謎を暴こうとすると原因不明の謎の死を遂げるので要注意という意味なのか。そのなかに、1つだけ統計の教科書があった。前に発見した時は、初心者にはすごくよい教科書だな、と思った本だった。



これだ!!アラーの神様。ありがとう!!





その本は、『Medical statistics made easy』というタイトルで、中味は非常にシンプル。まず、扱っている内容が医療統計に必要なものだけに限定されていて、非常に少ない。次に、ややこしい数式が出てこない。さらに、統計をする上ででてくる、結果にはあまり関係がないのだけど、意味がありそうな言葉や概念を、『無視してよい』とばっさり切り捨てている事。その逆で、この統計の時はこれだけを見なさい、と言う事がはっきりと書いている事。

統計の教科書をはじめから最後まで飽きずに通読できたという人はかなり少ないと思う。よくわからない数式は無数に出てくるし、説明の日本語はよくわからないし。医療統計をやるだけ、論文を読むだけに統計の知識が必要なのに、統計の教科書をはじめから最後まで勉強するのはそれに費やす労力が大きすぎるのだ。しかも、数式を記憶しても扱うデータの数が多すぎて、とても計算機と紙と鉛筆で自力で計算出来るはずもなく、結局、統計ソフトに頼る事になる。そもそも、今や統計はパソコンソフトを使ってやるもので、数式を覚えたり理解してもほとんどなんの意味もない。大事なことではあるけど、残念だけど、なんの意味もない。どんな時にどんな処理をやって、どの値に意味があるのかさえきちんと知っていれば、普通の論文の統計処理に困る事はない。

さらに、統計は、習うより慣れろ、で自分でやらないと理解できないことが多い。統計処理をしないといけない状況に追い込まれ、あ〜でもない、こ〜でもないと、はじめのうちは間違いを繰り返し、無駄なことを何回もやって、正しい答えを導く過程で、なるほど!!と思いながら進んでいくのが遠回りだけど、教科書を読んで全部理解したうえで最初から正解を出そうとするよりも、ずっと使える知識になる。

あまりにもいい本なので、日本語翻訳の権利を取得して、訳して売り出してやろうかと思ったけど、やはりいい本だけあって既に日本語訳も発売されている。しかし、もし、今から統計をやろうと思っている人で、英語の論文を書きたいのであれば、最初から英語の本を読む事をお勧めする。理由は3つある。1つは、日本語の統計の教科書の日本語は英語よりも難解であるから。なにかの統計の本に、統計学者は総じて日本語が下手だ、と統計学者自身が書いていて(僕の意見ではありません。また、見解には個人差があります。)妙に納得したことがある。例えば、95%CIの説明なんか100回読むと95回くらいはわからない。これを95%unClearという(こういうの思いつくと、おっさんになったな〜と思う)。2つ目は、いまある統計ソフトのほとんどは英語バージョンだし、日本語のものがあっても英語バージョンのほうが圧倒的に安く購入できるから。3つ目は、英語の論文ではもちろん英語で統計処理の説明がしてあるので、論文を読むにも書くにも英語で慣れている方が便利だし、論文を書いて査読にまわった時に、統計の査読の言っている事がよくわかるから。なんでもそうだけど、英語には英語独特の言い回しがあって、それが理解できないと単語は全部理解できていても、その文そのものの意味がわからないということがあるから。







最後に、その『Medical statistics made easy』を紹介しておきます。英語の本を買う前に、少しだけ相談してもらえると、アラーの神はあなたの前にも現れるかもしれません。メーリングフォームからどうぞ。


Medical Statistics Made EasyMedical Statistics Made Easy
(2008/04/18)
Michael Harris、Gordon Taylor 他

商品詳細を見る



たったこれだけ!統計学たったこれだけ!統計学
(2009/10)
Michael Harris、Gordon Taylor 他

商品詳細を見る









スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

このブログの登場人物
A教授:この病院のボス。手術中の紳士的な態度もさることながら、普段の笑顔も素敵。 H先生:A教授と同じ立場のボス。手術中は吠える鬼神に化す。手術を離れるとびっくりするくらい温かい人。実はいろいろな人のことをよく考えているのはこの先生。スロバキア人。 心臓先生:定年まじかのベテラン心臓外科医。みんなの指導医で、論文の数も凄まじく、統計処理も天才的。アフリカのブルンジ人。 J先生:兄貴のような執刀医。明るくて楽しいのだけど、感情の起伏が激しくて手術中は叫びまくることも。でも、その次の瞬間には笑っている。ギリシャ人の血をひくドイツ人。2012年の8月からベルリンの小児心臓外科のボスとして赴任。 C先生:推定年齢45~48歳の女医さん。だれも本当の年齢は知らない。長くこの病院に勤めていて、J先生の去った後、ようやく執刀医の位置に。ドイツ人。 L先生:J先生の後がまで赴任してきた先生。アメリカで修行した経験あり。ドイツ人らしい慎み深いいい人。 P先生:30歳の唯一の若者。元気でいい奴だけど、ちょっと性格が悪く看護師さんからは嫌われていたりいなかったり。H先生と同じスロバキア人で、H先生の保護下にいる。やや過保護?! D君:元々はスクラブナースだったけど才能を見いだされて手術アシスタントに。
プロフィール

遮断鉗子

Author:遮断鉗子
心臓外科医のブログです。
小児心臓外科医(35歳 心臓外科 10年目)のドイツ留学記です。
2010年7月からドイツに。

毎日の手術の事を中心に。ドイツビールの紹介もしていきます。

心臓同好会
心臓を熱く語る、勉強するみんなの会です!! こちらにも遊びにきてくださ~い!!
遮断鉗子へのメールはこちらからどうぞ
記事に関係ないことを言いたい!!  他の人には読まれたくない!!  という方はこちらからメールをお送りください。

名前:
メール:
件名:
本文:

最新コメント
リンク
カテゴリ
月別アーカイブ
来て下さった方々
最新トラックバック
検索フォーム
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。