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駆け足の30分で、医療の未来を大胆予想してみる(1)。笑いところのない前半

ロシアの先生がうちでの実習を終えて帰る前に、朝のカンファレンスの後に10分だけのプレゼンテーションをすることになっていた。しかし、今日のカンファレンスは荒れ模様で、カンファレンス終了時間はとうに過ぎ、ロシア人の先生には『5分だけでやってね』と言い渡された。ロシア人の先生が5分じゃ難しいな〜と言いながら始めたプレゼンは延々30分にも及んだ。しかも、かなりの枚数のスライドをとばしたにも関わらず。一体、どれだけしゃべるつもりでいたんだろう。忙しい朝のカンファレンスで30分も延長するなんて前代未聞のことだった。内容が非常に興味深かったので、皆が時間を忘れていた。

その内容は、中国製のカテーテルでの膜様部心室中隔欠損症閉鎖について。

心房中隔欠損症がカテーテル治療できるようになってもう随分経つ。日本でも限られた施設だけども、心房中隔欠損のカテーテル治療が行われている。先天性心疾患の世界では、心房中隔欠損症の次は、動脈管開存の閉鎖、さらに心室中隔欠損症へとカテーテル治療は進化を遂げている。心房中隔欠損症と動脈開存のカテーテル治療はヨーロッパでは常識になっているが、心室中隔欠損症は筋性部と一部の膜様部へのカテーテル治療が始まっている。ドイツでも限られた施設だけの、まだまだ一般的とは言えない状況だと思う。

そんな状況のなか、ロシア、中国ではこの膜様部心室中隔欠損症へのカテーテル治療の認可がおり、一般使用されているという。2.5kg以上の大きすぎない心室中隔欠損症はほとんどがカテーテルで閉鎖できるらしい。胸部下部の小切開で開胸し心臓に到達、右室を穿刺してエコー下にデバイスを挿入して心室中隔欠損を閉鎖する。デバイスの基本的な形は、欧米、日本で使用されているアンプラッツァーとほぼ同じ。人工心肺手術への移行は3−5%、不整脈なし、入院期間は平均3日だった。

中国製のデバイスを使って、中国、ロシアでこの臨床使用が数年前から始まっていて、ロシアのこの先生の施設でも第一選択になっているとのことだった。





背中が寒くなる思いがした。





今までの、というと漠然としているけど、中国が台頭してくるまでの世界では、このようなデバイスの導入には相当高いハードルがあった。動物実験も安全実験もやまほどやって、ようやく患者さんで臨床応用して、長期予後を観察して、その間莫大なお金をつかってようやくヨーロッパ、アメリカで認可されて、さらにずっと遅れて日本で認可されていた。このような新しい器械(デバイス)の認可はアメリカよりもヨーロッパが一歩早く、しかもドイツは割と積極的に新しいデバイスを導入して、世界で最初にデバイスの結果を発表する事が多い。しかも、驚くほど多い患者さんの数を揃える事ができる。新しい人工心臓も、日本人が考え、アメリカ人が作り、ドイツ人が患者さんに使って論文を書き、そのデータを使ってアメリカで認可を取り、それが全部終った後に日本での認可がおりた。だから、認可された時にはある程度の安全性を確認されていたし、ましてや日本で使用する時には少なくともヨーロッパやアメリカの患者さんに使われたデータは手元にあるのが当たり前だった。だから、高すぎるくらいデバイスは高価だし、それは、ぼったくりじゃねえの?と思っても、安全と引き換えにはできないのかな、と幾分かは納得できるとこはなくもなかった。このような手間とお金と時間をかけて安全で有効と判断できる基準を設けて、多少、経済的には患者さんの負担にはなるかもしれないけど患者さんの安全を守るためのルールの中で医療は、進化し新しいものを生み出してきたはずだ。規則と秩序と、それに伴う対価という形で。




しかし、規則や秩序はそれを守る人がいるから成立する。そんなものくそくらえ、と全員が思えば、規則も秩序も成立しない。つまりは、くそくらえ、が時としては、あるいは場合によっては、新たな規則や秩序にだってなりうるのだ。











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このブログの登場人物
A教授:この病院のボス。手術中の紳士的な態度もさることながら、普段の笑顔も素敵。 H先生:A教授と同じ立場のボス。手術中は吠える鬼神に化す。手術を離れるとびっくりするくらい温かい人。実はいろいろな人のことをよく考えているのはこの先生。スロバキア人。 心臓先生:定年まじかのベテラン心臓外科医。みんなの指導医で、論文の数も凄まじく、統計処理も天才的。アフリカのブルンジ人。 J先生:兄貴のような執刀医。明るくて楽しいのだけど、感情の起伏が激しくて手術中は叫びまくることも。でも、その次の瞬間には笑っている。ギリシャ人の血をひくドイツ人。2012年の8月からベルリンの小児心臓外科のボスとして赴任。 C先生:推定年齢45~48歳の女医さん。だれも本当の年齢は知らない。長くこの病院に勤めていて、J先生の去った後、ようやく執刀医の位置に。ドイツ人。 L先生:J先生の後がまで赴任してきた先生。アメリカで修行した経験あり。ドイツ人らしい慎み深いいい人。 P先生:30歳の唯一の若者。元気でいい奴だけど、ちょっと性格が悪く看護師さんからは嫌われていたりいなかったり。H先生と同じスロバキア人で、H先生の保護下にいる。やや過保護?! D君:元々はスクラブナースだったけど才能を見いだされて手術アシスタントに。
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遮断鉗子

Author:遮断鉗子
心臓外科医のブログです。
小児心臓外科医(35歳 心臓外科 10年目)のドイツ留学記です。
2010年7月からドイツに。

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