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留学の仕方(6) 交渉 

病院も決まり、さて、いよいよここで働きたいという交渉をすることになる。僕も何度もこの交渉をやってきたけど、いまだに苦手。でも、何度かやるうちに、コツのようなものが掴めてきたので、現時点でこうやったほうがいいよな〜と思っている事を書いてみようと思う。ただ、僕の思う事が正しいか間違っているか、僕にもわからないし、交渉事は当然、相手の出方によっても変わってくるものなので、一概に言えないのだけど。

まず、一番大事な事は、ここで働きたいので話しがしたい、と機会をつくることだ。これは、自分から仕掛けなくてはいけないし、ここで相手が土俵に乗ってくれなければどうにもならない。メールでも可能だし、初期の交渉はメールのほうが時間をとれるし冷静に考えられるのでそれも悪くないと思うのだけど、こちらの人たちは日本以上に会って話をすることに重点を置いているので、交渉は直接会って話をするのが一番良いと思う。

さて、話しますよ、というとき。当たり前だけど、自分から話を始めて主導権を先に取ってしまうのがよい。日本のように、こちらの働きたい気持ちを汲んでくれて、むこうが説明してくれたり、いつからきなさい、と言ってくれたり、そういうことはない。基本的には、雇い主は、こちらの求めるものを与えるのが仕事だと思っていて、雇い主の思惑を押し付けたりそれを強いたりするような事はあまり言わない。最終的にそういうことになっても、まずは、こちらの意思を尊重する態度を取ってくれる。そういう状況なので、自分の考えをまずしっかり相手に伝える。

自分の考え方のプレゼンテーションは、まず、結論から先に言って理由を後から述べる。日本だと、相手に理解してもらおうと思うと、理由や背景をできるだけ説明して、なんとなく結論までいかなくても相手がわかるところまでお膳立てするのが正しいのかもしれないが、それはこちらではめんどくさがられる。途中で話を切られることもよくあるし、伝わらない事が多い。まずは、結論を言う。そして、なぜならば、と続けて理由はあとから述べる。結論も、もしここで働きたいと言うのであれば、ここで働きたい、いつから、いつまでのこの期間。このような仕事をしたい。この仕事はできない。と具体的に言う方がいい。

この時に、自分の日本での経験もきちんとプレゼンした方がいい。僕は、書いた論文と、手術記録を全部持って行った。手術記録は日本語だったけど、絵を全部描いていたので、むしろ喜んでみてくれた。相手はもう数えられないくらいの手術をやっている人なので、手術数の50や100なんてものはないに等しいと思うようでそれがなんだ、という感じだったけど、きちんと仕事をしているという証明にはなったと思う。

給料のこともできるだけ具体的に言うべきだと思う。日本の医師の給料がそのままもらえる可能性はほとんどないし、この国で自分が生きるために必要な金額がどの位は正直わからない。だから、その時はこどもの人数を含めた家族構成も伝えると考慮してくれると思う。

こういう交渉はすんなりいかないことも多い。はっきり、NOと言われなければ、どこかに可能性はないか探ってみる粘り強さも必要。ポストが空いてなければ、いつまで待てばポストが空くのか?とか。決定的になにか問題があって、100%ダメだと言われる事は逆にあまりなくて、相手は譲歩できる事と譲れない事をほのめかすので、そここそが交渉のやりどころで、日本人だからとか、留学でお世話になるから、という自分の後ろめたさ的なものはいったん忘れて、自分の立場を堂々と主張すべき。

絶対にやってはいけない事は、自虐。これは絶対にやるべきではない。日本では美徳だけど、これは単に自信がないのか、あるいは変な奴と見なされて、何も得しない。またまた、そんな事はないでしょ?と言ってくれる事も絶対にない。自虐を言っても、あ、そうなんだ、それはダメだね。で終ってしまう。

次に、意味もなく笑う事。いつも笑顔でいなさい。と教わっているからそういう場所でも相手の感情を逆なでしないように笑顔を作ったり、笑ったりする人もいるけど、真剣な話し合いの場所での笑顔は、バカにしているかバカだと思われて良い事はない。逆に相手の感情を逆撫ですることにもなりかねない。

絶対にやってはいけない、という程ではないけど、無駄な相づちもしないほうがいい。相手の話を聞く時は黙って相手の目をみて、話が終るまで耳をすませるのが正しい姿勢。日本では、聞いてますよ〜という合図に相づちを打ったり、うんうん、と言ってみたりするけど、これは邪魔なだけ。これに慣れていた日本人の僕でさえ、久しぶりにそんな人と話すと、あ〜うるさいな〜と思う。

あと、冗談は言うべきではない。真剣な話の場所での、むだな冗談はタブー。日本だと、気の利いたユーモアはOKかもしれないが、それでも場所と場合によると思う。アメリカ映画で、交渉の時に気の利いた冗談を言ってこちらに有利に話を進める場面があるけど、あれは高度な語学力と、知識に裏付けされた実力があるからなせる技であり、それがアメリカ人にとってもすごいと思われるから映画にもなるわけで、あれが日常で通用するはずがないと考える方が正しい。

昔ながらの、日本人が思う、礼儀正しく相手を尊重しながら話をしていけば、失礼な事をすることはまずないと思う。そこから自虐や無駄な笑顔を省いて、きちんと自分の立場や意思を簡単に主張を加えれば、それこそ最強の交渉術だと思う。慣れないのに外国人のように振る舞ったり、外国人の真似をしてどうにかしようというのは、逆に悪い印象を持たれがち。むしろ、日本人の持っている礼節の態度で落ち着いて望めば、大きくは間違えないと思う。

こんなことを言うと誤解を受けるかもしれないけど、外国での交渉の時の最も望ましい態度は、ゆずれない自己主張は堂々とできるけど余計ないことは絶対に言わない、どんな時も礼節と相手への尊厳を忘れない、誇り高い武士の姿勢だと僕は信じている。

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このブログの登場人物
A教授:この病院のボス。手術中の紳士的な態度もさることながら、普段の笑顔も素敵。 H先生:A教授と同じ立場のボス。手術中は吠える鬼神に化す。手術を離れるとびっくりするくらい温かい人。実はいろいろな人のことをよく考えているのはこの先生。スロバキア人。 心臓先生:定年まじかのベテラン心臓外科医。みんなの指導医で、論文の数も凄まじく、統計処理も天才的。アフリカのブルンジ人。 J先生:兄貴のような執刀医。明るくて楽しいのだけど、感情の起伏が激しくて手術中は叫びまくることも。でも、その次の瞬間には笑っている。ギリシャ人の血をひくドイツ人。2012年の8月からベルリンの小児心臓外科のボスとして赴任。 C先生:推定年齢45~48歳の女医さん。だれも本当の年齢は知らない。長くこの病院に勤めていて、J先生の去った後、ようやく執刀医の位置に。ドイツ人。 L先生:J先生の後がまで赴任してきた先生。アメリカで修行した経験あり。ドイツ人らしい慎み深いいい人。 P先生:30歳の唯一の若者。元気でいい奴だけど、ちょっと性格が悪く看護師さんからは嫌われていたりいなかったり。H先生と同じスロバキア人で、H先生の保護下にいる。やや過保護?! D君:元々はスクラブナースだったけど才能を見いだされて手術アシスタントに。
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遮断鉗子

Author:遮断鉗子
心臓外科医のブログです。
小児心臓外科医(35歳 心臓外科 10年目)のドイツ留学記です。
2010年7月からドイツに。

毎日の手術の事を中心に。ドイツビールの紹介もしていきます。

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