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『忍耐』と『へこたれない』の価値

日本人は主張しないからダメだ、と言われて久しい。

最近は主張しすぎて、あるいは主張の仕方や方向性が悪くて世界中(日本のマスコミはなにをもって世界中という言葉を使っているのかはなはだ不思議だけど)のマスコミから叩かれると言われている人も出てきたけど、まだやはり、日本は世界で主張しないから損をするということをいう人は少なくない。

僕も、留学が決まった時も、多くの留学経験者に、黙っていては誰も気を使ってくれない社会だから主張しなければ損するよ、とアドバイスを頂いた。

僕はこの『主張しないからダメだ』は半分正解で半分酷く間違っていると思っている。それは、外国人にはない、『我慢強さ』や『言わないけどきちんとやる』ことや『忍耐』することや『辛い状況でもへこたれずに文句も言わずに清々しく仕事をする』といった、外国人にはなかなかない日本人の美徳は、外国人には脅威だし、自分たちに持たないものだからこそ高く評価してくれるからだ。日本人のこの貴重な美徳こそは外国人にとっては、日本人の僕たちが思っている以上に価値がある事で、それを目先の損得で簡単に捨ててしまってはいけないと僕は強く思っている。


主張と忍耐の対比。これは、P君と僕の対比だったりもする。

P君はとにかく自己主張をする。手術をさせろ!あいつは仕事ができないから変えろ!オレはこうするんだから従え!と全ての行動において主張をするのではないかと思うくらいだ。手術ひとつでも、毎日誰にどの手術があたったかをチェックしていて、自分にあたってないと、A教授に『なぜ自分じゃないのか?』と激しく詰め寄る。どうやら、1か月に5例の手術をさせてもらうように約束しているらしく、5例に満たない時は、激しくA教授に詰め寄ることになるのだけど、それはもう、横で聞いていると『大丈夫か?』と心配になるほどだ。主張した分の手術はちゃんと手に入れているし、彼の試みは成功している。

僕がこちらにきて何を一番やったか?と訊かれたら、我慢だったと答えると思う。僕は正式なスタッフでこちらにきた訳ではなく、最初は見学者だった。法的な問題もあって、言われた事とちがうな〜と思う事もたくさんあったし,話せない事で悔しい思いをしたこともたくさんあった。何か問題が起こった時に、本当は僕はなにもしていないのに、あからさまに僕のせいにされたり、それに対して言い訳ができなかったりも悔しかった。もちろん、自分のせいではないとつたないドイツ語で伝えようとしても、他の人にかき消されて言えない事も多かった。こちらにきて、ずっと2助手をやり続けていたときも、それは人のやりくりで仕方がないし言葉がわからなければそうせざるを得なかった現実があったのだけど、僕としてはとても悔しい毎日だった。もちろん、たまに主張する事があっても、なかなか思っている事を言えずに、理解されないままに終ってしまった。

しかし、ある時、腹をくくった。主張するのはやめよう。そのかわり与えられている仕事を精一杯こなそう。多分、日本でやってきた事とか、自分のこだわりやプライドみたいなのを捨てた瞬間だったと思う。たまに腐りそうになったり、どうしてもやる気が出ない日もあった。悔しい事ももちろん相変わらずたくさんあったけど、がまんがまんがまん、と言い続けて、悔しさは表に出さないように心掛けて、仕事をしてきた。

僕がアフリカに行く事を決めたとき、多くの人に引き止められた。それは、とても嬉しかった。一番厳しいスクラブナースが、本気でいっちゃだめ、ここがダメになる、と言ってくれたことも嬉しかった。驚いたのは、H先生が僕を引き止めるために、スタッフ(Oberarzt)の席を用意してくれた事だった。さすがに、驚いた。僕がスタッフになるという事は、P君を飛び越えることになって、とてもP君は納得しないだろうな、と思った。それに、P君は同じスロバキア人のH先生の保護下にあるので、そういう事は絶対にないだろうと思っていたから。そんなことは絶対にないだろうと思っていたので、驚いた僕は欽ちゃんのように裏返った声で、なんでそ〜なるの?と訊いたら、H先生は『忍耐強かったし、諦めなかった。それはなかなかできることじゃないんだ』と言った。



主張と忍耐。カメがゆっくり歩いてきた道はとても長かった。気がついたらウサギは後ろにいた。



僕をずっと支えていたのは、留学する前にある先生に言われた『留学して外国人の真似をするのではなくて、日本人らしくありなさい』と言われた言葉だった。悔しくて泣きそうな時も、辛くてやめたい時も、この言葉を思い出して、オレは日本人だと、胸を張り続けられることができたのだと思う。

主張しないといけない時もある。でも、忍耐は、外国でも美徳だしそれは高く評価される。必ず。










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なんだかうれしい

今夜の私は珍しくアルコールが入っているけれど、それを差し引いてもこのブログをこれまで読んだなかで一番うれしい。(まるで自分のことのように)
引き止めてもらえるって、それはもう大変な評価。
主張と忍耐。それは日本でも大切なこと。
私も頑張ろーっと。

Re: なんだかうれしい

ニシキさん、コメントありがとうございます!!

本当にありがとうございます。
こうやって喜んで頂ける事がどれほどありがたいことか、いま身にしみています。ニシキさんの飲んでいるお酒よりもずっと深部にしみわたっています。

これからもどうぞ応援よろしくお願いします。

また、気軽にコメントお願いします!!
このブログの登場人物
A教授:この病院のボス。手術中の紳士的な態度もさることながら、普段の笑顔も素敵。 H先生:A教授と同じ立場のボス。手術中は吠える鬼神に化す。手術を離れるとびっくりするくらい温かい人。実はいろいろな人のことをよく考えているのはこの先生。スロバキア人。 心臓先生:定年まじかのベテラン心臓外科医。みんなの指導医で、論文の数も凄まじく、統計処理も天才的。アフリカのブルンジ人。 J先生:兄貴のような執刀医。明るくて楽しいのだけど、感情の起伏が激しくて手術中は叫びまくることも。でも、その次の瞬間には笑っている。ギリシャ人の血をひくドイツ人。2012年の8月からベルリンの小児心臓外科のボスとして赴任。 C先生:推定年齢45~48歳の女医さん。だれも本当の年齢は知らない。長くこの病院に勤めていて、J先生の去った後、ようやく執刀医の位置に。ドイツ人。 L先生:J先生の後がまで赴任してきた先生。アメリカで修行した経験あり。ドイツ人らしい慎み深いいい人。 P先生:30歳の唯一の若者。元気でいい奴だけど、ちょっと性格が悪く看護師さんからは嫌われていたりいなかったり。H先生と同じスロバキア人で、H先生の保護下にいる。やや過保護?! D君:元々はスクラブナースだったけど才能を見いだされて手術アシスタントに。
プロフィール

遮断鉗子

Author:遮断鉗子
心臓外科医のブログです。
小児心臓外科医(35歳 心臓外科 10年目)のドイツ留学記です。
2010年7月からドイツに。

毎日の手術の事を中心に。ドイツビールの紹介もしていきます。

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