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留学の仕方(7) 無給か有給か?清貧は清くない。

無給でもいいから留学したい。

僕も留学する前はそう思っていた。学ぶのだから見返りなんて求めないのは当然だし、給料をもらうなんておこがましい。でも、ここは大きな失敗点だったと今になっては思う。

日本には古から清貧の思想があって、自らの貧しさを顧みずに社会に貢献したり勉学に勤しんだりすることを美学としている。僕はこの清貧の思想は大好きで、この考え方が、初期研修医以前の医師には脈々と受け継がれている事は本当に素晴らしいと思う。だって、現行の初期研修医制度の前の研修医なんて、まさに、『患者さんのために、学ぶならもちろんお金なんていりません!!』という精神を前提にしたものだったし、実際に、そういう精神があろうがなかろうが、みんな貧乏だったのは間違いないと思う。

しかし、これは、日本以外では全く通用しない。生きるためにはお金が必要だし労働の対価には賃金をもらう事は、空が青かったり、そこに白い雲が浮かんでいたりするくらい当たり前のこと。そんななかで、無給でもいいです!!というのは、空は実は緑だと言ったり、雲は実は綿菓子なんです、と言っているくらい非常識な事。

実際には、無給で勉強しにきている医師もいる。しかし、それは、ごくごく限られたアラブのお金持ちの国から莫大な援助を受けている医師か、もしくは、急にお金持ちになった中国の医師に限った事で、すくなくとも先進国、もしくは、先進国よりちょっとだけ医療がまだそこまで発達していない国の医師は、労働の対価として賃金を求めるのは当然のこと。そこには、自分の医師としての価値と、プライドがあるから。たとえ、勉強にするにしても、医師としての責任を果たし、できる限りの力で医療に貢献しますよ、という証明でもある。

だから、無給でもいいと言う事は、私はどうでもいい人ですよ、と言っているようなもの。

責任もないから楽して勉強できるし、それでいいじゃない?と思う人もいるかもしれないが、そう思うのはとんだ勘違いだと思う。責任のない仕事、特に医療に関して、責任のない立場で学べる事はあるかもしれないけど、それは非常に薄っぺらで少なく、そういうものは短期の見学でも同じ事を得られると思う。

僕は、日本の医療の評価を貶めている原因の一つは、この『清貧』の思想に裏付けられた『無給の留学』ではないか、と思う。それはそもそもの人間としての尊厳や、医師としての責任やプロとしての仕事を、完全に放棄してしまっていると思う。

僕は、ここに来た時は法的な条件が揃わずに、無給の見学者だった。それでもいいと思っていた。幸いなことに、ここの病院の偉い人たちは、きちんとこちらの水準で僕のことを扱ってくれたので、『安い労働力』とか『ただ(無料)の奴隷』としての扱いはほとんどなかった。と言っても、そういう雰囲気から抜け出して、それなりの信頼や、一人のプロの医師としての信頼を勝ち得るまでに、かなりのダメージだった事は間違いないし、ここが大きな失敗だったと思っている。ただ、こちらでも、ただ(無料)の日本人がたくさんやってくる病院は、そういう日本人を扱い慣れているので『安い労働力』とか『ただ(無料)の奴隷』と思っている節がある。これはあきらかにある。こういう利用のされ方は、同じ日本人としてとてもとても悲しい。

留学を考えるなら、少しでもいいから給料を得るべきだし、絶対に無給はさけるべき。



若い人を留学をさせる偉い先生方にお願いがあります。『無給ならいつでも留学させる』という安易な条件で、若い先生たちを留学させないで下さい。これは、その本人や家族を、見ず知らずの外国で辛い立場に追いやる事になりますし、日本人医師全体が安く見られる原因でもあります。『無給ならいつでも留学させる』という安易な条件で、若い先生たちを留学させるなら、向こうの国から交換留学として無給で人を連れてきて下さい。それで初めて同等であって、その条件を向こうが飲むなら、それでもいいと思います。しかし、留学させる以上、生きていけるだけの賃金をその留学先から得る事は当然のことであって、その交渉までして賃金を得られることを保障して送り出すのが、送り出す者の責任だと思うのですが。いかかがでしょう?










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このブログの登場人物
A教授:この病院のボス。手術中の紳士的な態度もさることながら、普段の笑顔も素敵。 H先生:A教授と同じ立場のボス。手術中は吠える鬼神に化す。手術を離れるとびっくりするくらい温かい人。実はいろいろな人のことをよく考えているのはこの先生。スロバキア人。 心臓先生:定年まじかのベテラン心臓外科医。みんなの指導医で、論文の数も凄まじく、統計処理も天才的。アフリカのブルンジ人。 J先生:兄貴のような執刀医。明るくて楽しいのだけど、感情の起伏が激しくて手術中は叫びまくることも。でも、その次の瞬間には笑っている。ギリシャ人の血をひくドイツ人。2012年の8月からベルリンの小児心臓外科のボスとして赴任。 C先生:推定年齢45~48歳の女医さん。だれも本当の年齢は知らない。長くこの病院に勤めていて、J先生の去った後、ようやく執刀医の位置に。ドイツ人。 L先生:J先生の後がまで赴任してきた先生。アメリカで修行した経験あり。ドイツ人らしい慎み深いいい人。 P先生:30歳の唯一の若者。元気でいい奴だけど、ちょっと性格が悪く看護師さんからは嫌われていたりいなかったり。H先生と同じスロバキア人で、H先生の保護下にいる。やや過保護?! D君:元々はスクラブナースだったけど才能を見いだされて手術アシスタントに。
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遮断鉗子

Author:遮断鉗子
心臓外科医のブログです。
小児心臓外科医(35歳 心臓外科 10年目)のドイツ留学記です。
2010年7月からドイツに。

毎日の手術の事を中心に。ドイツビールの紹介もしていきます。

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