FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

医局をやめて良かったこと、悪かったこと。

どういう検索をしてこのブログにたどり着いたか?というのが日毎に見られる機能がついている。これを見ると、『医局 やめたい』『医局 やめるとどうなる』という言葉で検索してこのブログにたどり着いた人がほとんど毎日いる事がわかる。これを見るたびに、胸が痛い思いがする。僕もそうやって悩んでいたし、不安を抱えていた。そこで、とりあえず、この段階で、医局をやめて良かった事、悪かった事を書いておこうと思う。いま、医局にいる事に不安や不満を抱えている人、やめたらどうなるのだろうと大きな不安を抱えている人のなんらかの助けになれば。

僕は、現行の初期研修医制度の始まる前の卒業生なので、医師になったその年に入局して、6年目に医局をやめた。医局には申し訳ない事したという気持ちはずっと持っているし、感謝している事も多い。いつか医局に恩返しができたらな、と思う。そのためには、もっと心臓外科医としての実力や、他のなんらかの要素を自分の中に育てないといけないと思っている。では、いまからもとにいた医局を含め、どこかの医局にもう一度入るか、というと、医局に入る事はいまのところは考えていない。

医局をやめて一番良かった事は、個人商店でも社長は社長、というのと同じで、相手がどんな人であろうと対等な立場で話ができるようになったこと。対等、というのはちょっと言い過ぎかもしれないし、もちろん、向こうはそう思ってないかもしれないけど、組織の中の一人ではなくて、個人としての自分としてものが言えるという事。それと、全ての手柄は自分のもの、ということ。自分のやっている事に関して、誰にも義理や義務を感じなくていいし、これは僕のやった事、と言えるという事。もちろん、全てのことには責任が伴うけど、なにかやらかしても自分が腹をくくれば誰にも迷惑をかけなくてすむ。『教授に迷惑がかかる』とか『教授の顔に泥をぬるから』ということを考える必要がない。全部、僕一人の責任だからこそ、思い切ったこともできるし、必要以上に臆病にならなくてもいい。自由に自分の道を決められるし、それは誰にも遠慮する事もない。上下関係の縛りがないから、自分の実力を発揮できるところを自分で選択できるし、自分が目指そうと思えば、どんどん自分の目指す上に向かって挑戦できる。日本にいるとなかなかそう思えないけど、自分は世界中どこでも生きてやると思えば、選択肢は無限に広がる。

悪かった事は、やはり将来への漠然とした不安は大きくなったかもしれない。医局いた時ももちろん将来に対する不安はあったけど、我慢さえすれば心臓外科医をやめるようなことは滅多にない。やめてしまうと、全てをプロデュースしてコーディネートするのは自分だから、判断ミスや運が悪ければサドンデスで心臓外科医をやまないといけないタイミングもあるかもしれない。あとは、日本での働く選択肢が狭まる。大人の心臓外科医ならまだ小児よりは広いとは思うけど、小児はかなり狭いのが現実だと思う。あまり気にはしてないけど、『医局をやめた社会不適合者』のような扱いを受ける事がたま〜にある。これは、こちらではなくて、そう考えている向こうに問題があると思っているのだけど。

初期研修医を終えたばかりの人が心臓外科医を目指す時には、医局に入る事をお勧めしている。ひとつは、専門医などの資格の問題。これは、医局に入った方が断然有利。施設の問題もあるし、一番の問題は指導者。初期研修医をおえたばかりくらいだと、どの指導者が本当のことを言っているのか見極めるのは難しいと思う。心臓外科医になってはじめの数年は、その人の心臓外科医としての一生を左右するくらい大事な時期だと思う。だから、目の前の甘い餌に釣られて、おかしな指導者の下で〇〇流的な偏った指導を受けるのはとても損をする。医局にいる指導者の全員が良い指導者とは限らないけど、いろいろな人の下で働くと、良いことも悪いこともたくさん体験できる。若い人に医局に入るように勧めているもうひとつの理由は、この心臓外科というヤクザな世界を生きるための、礼儀や仁義を学ぶため。この魑魅魍魎の心臓外科の世界を生き抜くには、ゆとり社会の初期研修医を終えたそのままの雰囲気では、あまりに純粋で無知で、あまりに幼稚だから。

医局にいようといまいと、大事なことは、心の自由は誰にも犯されてはいけないということ。医局にいることも自分で選択してそこにいるのだし、医局にいないことも自由に選んでいる事。医局にいると、ともすると、周りも自分も組織の中の一人としての意識が強すぎて、自由は自分で所有するものだということを忘れてしまいがち。これは、なにも組織のなかで自分勝手にしてもいい、と言っている訳ではない。組織の中にいる限りでは、その中のルールに従う事は大事だと思う。ただ、それを選んでいるのも自分であって、やめようと思えばやめればいいだけの話だということ。それは強制されている訳ではなくて、その自由は最後まで自分が持っているのだとしっかり意識しておく事が大事だと思う。

最もみっともないのは、医局に属しながら医局の文句や愚痴ばかりを言う事だと思う。医局に属してない人間から見ると、保護されている人だけが言える甘美な感傷にしか思えない。そんなに不満なら、外にでて一緒に戦おう。きっと、外にでたら、文句を言えた事がどれだけ恵まれていた事かからだの芯から理解できると思うから。

医局をやめても、不思議なことに道は開かれるし、自分が求めれば素晴らしい指導者にも出会える。もし、医局をやめていなくても同じことを言っているかもしれないけど、僕はこれまでの選択を間違ったとは思っていない。これから待ち受けている何かに、わくわくしている。


スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

このブログの登場人物
A教授:この病院のボス。手術中の紳士的な態度もさることながら、普段の笑顔も素敵。 H先生:A教授と同じ立場のボス。手術中は吠える鬼神に化す。手術を離れるとびっくりするくらい温かい人。実はいろいろな人のことをよく考えているのはこの先生。スロバキア人。 心臓先生:定年まじかのベテラン心臓外科医。みんなの指導医で、論文の数も凄まじく、統計処理も天才的。アフリカのブルンジ人。 J先生:兄貴のような執刀医。明るくて楽しいのだけど、感情の起伏が激しくて手術中は叫びまくることも。でも、その次の瞬間には笑っている。ギリシャ人の血をひくドイツ人。2012年の8月からベルリンの小児心臓外科のボスとして赴任。 C先生:推定年齢45~48歳の女医さん。だれも本当の年齢は知らない。長くこの病院に勤めていて、J先生の去った後、ようやく執刀医の位置に。ドイツ人。 L先生:J先生の後がまで赴任してきた先生。アメリカで修行した経験あり。ドイツ人らしい慎み深いいい人。 P先生:30歳の唯一の若者。元気でいい奴だけど、ちょっと性格が悪く看護師さんからは嫌われていたりいなかったり。H先生と同じスロバキア人で、H先生の保護下にいる。やや過保護?! D君:元々はスクラブナースだったけど才能を見いだされて手術アシスタントに。
プロフィール

遮断鉗子

Author:遮断鉗子
心臓外科医のブログです。
小児心臓外科医(35歳 心臓外科 10年目)のドイツ留学記です。
2010年7月からドイツに。

毎日の手術の事を中心に。ドイツビールの紹介もしていきます。

心臓同好会
心臓を熱く語る、勉強するみんなの会です!! こちらにも遊びにきてくださ~い!!
遮断鉗子へのメールはこちらからどうぞ
記事に関係ないことを言いたい!!  他の人には読まれたくない!!  という方はこちらからメールをお送りください。

名前:
メール:
件名:
本文:

最新コメント
リンク
カテゴリ
月別アーカイブ
来て下さった方々
最新トラックバック
検索フォーム
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。